産千代稲荷神社(大久保石見守長安陣屋跡)

2016年8月11日


御祭神:倉稲魂命
社格:旧無格社
所在地:東京都八王子市小門町82
最寄駅:JR中央線 八王子駅・西八王子駅
URL:http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/minamitama/hachiouji/5877
御由緒:甲斐武田氏滅亡後、徳川家康に仕えた大久保石見守長安は、伊奈忠次・長谷川長綱・彦坂元正らとともに関東圏の支配体制を築く代官頭の一人として権勢を振るった人物である。
1591(天正19)年、長安は北条氏照の旧領である八王子に8000石の所領を与えられた。
八王子は徳川氏の直轄領となり、八王子城は廃城されたものの、甲州方面から江戸を護る軍事上の重要拠点としての位置づけに変わりはなく、関東十八代官(武蔵代官とも)も駐在した。
当地に陣屋を構えた長安は、敷地の西南に位置した当地に鬼門除け・五穀豊穣・殖産興業の神として倉稲魂命を奉斎し当社を創建した。
社号の「産千代」は千代に続くようにとの願意によると伝えられる。
1704(元禄17)年に八王子宿の代官駐在制度は取り止めとなり陣屋も廃された。
跡地は畑地となったが、当社には手が付けらることはなく、大木が多く繁っていたことから「稲荷森」と称された。

JR八王子駅北口から中央線の線路沿いに西へ約1.5kmほど。
鎮座地の小門町(おかどちょう)という地名は、陣屋の北側裏門前に公事宿(くじやど)が立ち並び「御門宿」「於門宿」と呼ばれたことに由来し、大久保長安の没後「小門」の字に変えられたといわれる。
社号標のように見えるのは「大久保石見守長安陣屋跡」の石標。
長安は、甲州街道を整備をするとともに、のちに甲州街道最大の宿場町・八王子十五宿を建設している。
宿内には周辺で生産された繭や生糸、織物が集まるようになり、毎月4と8の日に開かれる市で取引された製品は「八王子織物」と呼ばれた。
八王子は「桑都」とも称され、宿場町としてだけでなく、大消費地・江戸への織物の供給基地としても機能したのである。
八王子発展の基礎を築き、江戸幕府初期の重鎮だった長安の陣屋跡であることから1964(昭和39)年7月、当地は市史跡に指定された。


拝殿前に1902(明治35)年奉納の狐像。
両方とも口を結び、左は子狐を、右は宝珠を抱える。
旧社殿は市街の80%が焦土と化した1945(昭和20)年の八王子大空襲で焼失、1954(昭和29)年に現社殿が再建された。


境内社は稲荷社が三座。
いずれも社号、由緒などは不明。
石鳥居に掲げられた扁額は破損しているのが惜しいところだが、彫刻が印象的。
脇には1864(文久4)年造の水盤も。


産千代稲荷神社 御朱印。初穂料300円。
境内右手の社務所(宮司様宅)にて受けられる。