小野神社(武蔵国一之宮)

2016年3月2日

多摩市・小野神社
御祭神:天下春命・瀬織津比咩命・伊弉諾尊・素盞嗚尊・大己貴大神・瓊々杵尊・彦火火出見尊・倉稲魂命
社格:延喜式内小社(論社)・武蔵国一之宮・旧郷社
所在地:東京都多摩市一ノ宮1-18-8
最寄駅:京王電鉄京王線 聖蹟桜ヶ丘駅
URL:http://onojinja.or.jp/
御由緒:創建は紀元前531(安寧天皇18)年2月、无邪志(武蔵)国造・惠多毛比命(兄武日命)が祖神である天下春命(あめのしたはるのみこと)を奉斎したことに始まるとされる。
(注:无邪志国造の祖神は建比良鳥命とする説もあり、勧請したのは知々夫国造の可能性がある。)
天下春命は「先代旧事本紀」に八意思兼神の御子神としてその名があり、饒速日命による天孫降臨の際、護衛として随従した32柱の神の1柱である。
史書「日本三代実録」に、884(元慶8)年7月、それまでの従五位上から正五位上の神階を授けられた記録が残る。
その後、総社六所宮(現・大國魂神社)に東殿第一次の席を与えられ、武蔵国一之宮と称された。
927(延長5)年に編纂された「延喜式神名帳」内の一社「小野神社」について、府中・小野神社(小野宮)とともにその論社となっている。
1051(永承6)年、源頼義・義家が奥州下向の途次に参籠し、太刀一振と詠歌一首奉納したとされる。
史書「吾妻鏡」や南北朝時代の説話集「神道集」にも一宮としての記載があり、太田道灌や後北條氏などの寄進をうけて栄えた。
太田道灌は当社の社殿、末社等を造営したというが、戦乱や多摩川の氾濫により度々被災し一時衰退した。
江戸時代に入り徳川二代将軍・家忠により再興、1648(慶安元)年には社領十五石の朱印を附されている。
1868(明治元)年、神仏分離令により本地仏とされていた文珠菩薩が真明寺(現・一ノ宮1-38-1)に遷された。
1873(明治6)年12月、郷社に列せられている。
1926(大正15)年3月30日、近隣の失火により御神体及び一部の神宝と鳥居を除いて類焼し、1927(昭和2)年に再建された。
1964(昭和39)年、社殿を後方の風致林に御遷座し境内が拡大されるとともに、社務所や随神門が再建されている。
多摩市・小野神社 御神木の大ケヤキ多摩市・一ノ宮渡しの碑
最寄駅は聖蹟桜ヶ丘駅。
駅名の「聖蹟」は、かつて明治天皇の行幸があり、御狩場が連光寺付近にあったことに因む。
駅西口から左手に向かい、ザ・スクエアショッピングセンターの角を左折、宮下通りに入る。
少し行くと注連縄が架けられた2本の大ケヤキとモニュメントが見えてくる。
このケヤキが小野神社の御神木で、かつてこの付近に一の鳥居があったとされる。
ここから左手の「神南せせらぎ通り」と名付けられた、水路と石畳が整備された小径を辿っていくと10分弱ほどで玉垣が見えてくる。
多摩市・小野神社 社号標・鳥居多摩市・小野神社 随身門
多摩市・小野神社 随身門彫刻 (1)多摩市・小野神社 随身門彫刻 (2)
多摩市・小野神社 随身門彫刻 風神多摩市・小野神社 随身門彫刻 雷神
神南せせらぎ通りから来ると先に南側の境内入口が見えてくるが、表参道は西側である。
1964(昭和39)年に再建された随身門には霊獣や風神雷神などの緻密な彫刻が施されており、目を奪われること必至だ。
多摩市・小野神社 南門鳥居多摩市・小野神社 南門
多摩市・小野神社 南門 社号標多摩市・小野神社 南門 社号標裏面
ちなみに南側の神門は、現在の随身門造営時に移築されたもので、そばには延喜式内と刻まれた1890(明治23)年造の社号標がある。
多摩市・小野神社 稲荷社 鳥居多摩市・小野神社 稲荷社
多摩市・小野神社 手水舎多摩市・小野神社 木造随身倚像
随身門をくぐった参道の左脇には稲荷社(保食神)が一座、右脇には都指定有形文化財「木造随身倚像」が収蔵されているらしき建物と手水舎。
手水舎の水盤は1837(天保8)年の奉納物だ。
多摩市・小野神社 拝殿多摩市・小野神社 ハート石
拝殿前、右手には注連縄がかけられた石が置かれている。
これは境内に埋まっていた石を掘り返したところ、ハート状のくぼみがあったため、縁起が良いであろうということで置かれたそうだ。
多摩市・小野神社 社殿多摩市・小野神社 本殿
小野神社は社史をたどれる資料が少ないこともあってか、大変謎が多い神社である。
社号の「小野」については当地の旧称である小野郷、陽成上皇の御料牧・小野牧などの地名に由来するらしい。
祭神については、かつては小野氏祖の天押帯日子命を祀っていた、あるいは瀬織津比咩命のみ祀っていたという説がある。
また、多摩川を挟み府中市に鎮座する小野神社とは元はひとつの社であった、あるいはどちらかが分祠であるなど諸説ある。
宮司様にお話をお聞きしたところ、あくまで個人的見解としながらも、全国各地には治水祈願の目的で川を挟んで一対の社を祀る例があり、小野神社もそれと同様に多摩川河畔に創建されたのではないか、との説を述べられている。
大宮の氷川神社との武蔵国一之宮を巡る関係も不可解だが、これについては小野神社が当初一之宮とされていたことは間違いないようだ。
ただし一之宮は、現在認識されているような神社の格式ではなく、行政機能の拠点としての位置づけであった。
鎌倉期以降、武家支配に移行し朝廷の影響力が弱まったことで、一之宮の意味合いも本来とは異なるものに変化していったとみられる。
多摩市・小野神社 境内社多摩市・小野神社 秋葉大権現
社殿左手奥の境内社合殿に12柱の神々が奉斎されている。
伊勢神宮内宮(天照皇大神)
伊勢神宮外宮(豊受大神)
三嶋神宮(事代主命)
八坂神社(須佐之男命)
愛宕神社(軻遇突智命)
安津神社(日本足彦國押人命・天押帯日子命のこと)
日代神社(大足彦忍代別命・景行天皇の諡号)
鹿島神社(武甕槌命)
子安神社(木花開耶姫命)
厳島神社(市杵嶋姫命)
方便神社(鹽土老翁命)
摂社・堰宮神社(水分神)
秋葉神社(軻遇突智命)は小祠が別に置かれていて、なぜか紅白の可愛いだるまさんもいらっしゃる。
多摩市・小野神社 御朱印帳
多摩市・小野神社 御朱印帳。初穂料は各2,000円。
ピンクと黄色は大判(12cm×18cm)で社号入り、通常サイズ(11cm×16cm)の赤と紺(撮影時は欠品中)がある。
武蔵国一之宮・多摩市小野神社 御朱印
多摩市・小野神社 御朱印。初穂料500円。
境内右手の授与所でいただけるが、不在の場合も多いようなので、事前に連絡して確認された方がいいだろう。