筑波山神社

2017年8月10日

筑波山神社

概要

日本百名山のひとつ、筑波山を御神体として祀る延喜式内社。
神代より信仰の対象であり、中世は江戸幕府の威光を背景に修験道の霊山として隆盛した。

御祭神 筑波男大神(伊弉諾尊)
筑波女大神(伊弉冊尊)
社格 延喜式内社(名神大社1座・小社1座)・旧県社・別表神社
鎮座地 茨城県つくば市筑波1番地
最寄駅 つくばエクスプレス つくば駅
筑波山シャトルバス 筑波山神社入口停留所
URL http://www.tsukubasanjinja.jp

御由緒

創建時期は不明だが、筑波山は先史時代より信仰の対象だったとみられる。
崇神天皇の御代(紀元前97~30年頃)、筑波・新治・茨城の三国が成立し、物部氏の系統といわれる筑箪命(筑波命)が筑波国造に任ぜられ、祭政一致で奉仕した。
(※初代筑波国造は阿閉色命とする説もある。)
721(養老5)年に成立した地誌「常陸国風土記」筑波郡の条には「神宮(カムツミヤ」として記載がみられる。
景行天皇の御代(71~130年)、日本武尊は東征の際に筑波山を登拝した後、甲斐国酒折宮で詠んだ「迩比婆理 都久波袁須疑弖 伊久用加泥都流(新治 筑波を過ぎて 幾夜か寝つる)」の御歌に対し、御火焼翁が「迦賀那倍弖 用邇波許許能用 比邇波登袁加袁」(かがなべて 夜には九夜 日には十日を)と返歌した。
この故事が連歌の発祥といわれ、連歌の異称である「筑波の道」もこれに由来する。
また筑波山は歌垣(男女が求愛歌を詠み合って相手を見つける集い)の場でもあり、「万葉集」には歌垣を詠んだ歌など筑波山にちなむ二十五首が収められている。
奈良時代の史書「日本紀略」823(弘仁14)年正月21日の条に官社とする記述があり、「続日本後紀」842(承和9)年10月2日の条には筑波女大神が無位から従五位下に列せられたことが記されている。
さらに871(貞観13)年2月には筑波男神が従三位へ、874(貞観16)年11月には筑波女神が正四位下に昇階した。
927(延長5)年の延喜式神名帳においては常陸国筑波郡の条に「筑波山神社二座 一座名神大 一座小」とあり、男神が名神大社、女神が小社に列したと解釈されている。
奈良時代末期から平安時代初期頃、法相宗の僧侶・徳一により筑波山寺(のち筑波山知足院中禅寺→護持院)が開創され、筑波神はそれぞれ男神が千手観音・女神が十一面観音を本地仏とする筑波山両部権現として祀られるようになった。
また小田城主八田知家の末子・明玄(八郎為氏)が国造の名跡を継いで筑波別当大夫となり、以降は修験道の霊山として名を高めていく。
1590(天正18)年8月、徳川家康は江戸入府後、筑波山を江戸城鎮護の霊山と崇めた。
1600(慶長5)年、それまでの社家・筑波氏に代え、帰依していた大和国長谷寺の梅心院宥俊を中禅寺に移して別当に補し、知足院を再興し将軍家の御祈願所としている。
1602(慶長7)年11月25日には神領500石を寄進し、春秋両度の御座替祭をもって江戸城鎮護・諸国安泰の祈願神裏を定めた。
宥俊の弟子・二世光誉は大阪夏冬の陣において、家康に請われ陣中で戦勝を祈願し、勝利の後2代将軍秀忠が1616(元和2)年10月社堂伽藍を普請した。
さらに1633(寛永10)年秋には3代将軍家光が社殿堂宇を寄進、5代将軍綱吉も社堂の造営や領地加増を行っている。
この頃には神領1500石を有し、伊勢・日光と共にその領民は国役金を免除され奉仕を任ぜられた。
森幸安が1755(宝暦5)年に製作した「常陸国筑波山上画図・下画図」には、将軍家の保護を受け隆盛を極めた境内の様子、そして国内有数の霊山として修験者らが用いた登拝道や山内の諸堂について詳細に描かれている。
常陸国筑波山上画図常陸国筑波山下画図
国立公文書館蔵「常陸国筑波山上画図」「常陸国筑波山下画図
幕末の1864(元治元)年、水戸藩内の急進的な尊王攘夷派であった藤田小四郎ら天狗党が筑波山に結集し挙兵した(筑波山事件)。
明治維新が起こり、1868(明治元)年に新政府が発布した神仏分離令により護持院は廃される。
この流れの中で起きた廃仏毀釈運動で、護持院本堂をはじめ多くの仏堂伽藍が破却された。
1869(明治2)年9月、神祇大副伯の実弟・白川資義を斎主に迎え、1873(明治6)年10月4日県社に列格後、1875(明治8)年、本堂の跡地に現拝殿が造営される。
1907(明治40)年4月に神饌幣帛料供進神社に指定され、同年8月には境内の無格社・別雷神社を合祀した。
祭神については江戸時代以降、人格神を充てる説が散見されるようになり、明治に入ってもしばらくは祭神不詳とされていた。
1909(明治42)年1月、六国史の記載に基づき「筑波男神」「筑波女神」と定められた。
1922(大正11)年、当時の社司が二柱の神に伊弉諾尊・伊弉冊尊を併記すると定めている。
1928(昭和3)年4月に社殿改修が行われたのち終戦を迎え、戦後は神社本庁の別表神社となっている。
1976(昭和51)年5月と1985(昭和60)年4月には昭和天皇・香淳皇后両陛下が行幸啓された。

境内紹介

筑波山神社 大鳥居筑波山神社 一の鳥居
TXつくば駅発のシャトルバスを利用する以外、神社至近までの交通機関によるアクセス方法はない。
JR常磐線経由では土浦駅が最寄りだが、関東バスで筑波山口まで移動し、シャトルバスへ乗り換えとなる。
つくばエクスプレスでは、バスの往復利用およびケーブルカー・ロープウェイ乗り放題を合わせた割引乗車券を販売している。
参考URL:http://www.mir.co.jp/service/otoku/
「筑波山神社入口」バス停で下車し、朱塗りの大鳥居をくぐった後、約400mのぼった先に境内入り口がある。
大鳥居は一の鳥居ではなく、境内入り口から南に850mほど離れた市営筑波山麓筑波駐車場そばの石鳥居がそれである。
1759(宝暦9)年の造立で、かつてはここから上が神域とされていた。
このほか筑波山口バスターミナル付近にも鳥居がある。
筑波山神社 御神橋筑波山神社 社号標と手水舎
参道を上り始めるとすぐに茨城県指定文化財の御神橋がある。
1633(寛永10)年に徳川家光が造営し、1702(元禄15)年に徳川綱吉が改修したもの。
普段は渡れず、春秋の御座替祭と2月の年越祭時のみ渡橋が可能となる。
筑波山神社 参道石段筑波山神社 随神門
筑波山神社 参道狛犬 吽筑波山神社 参道狛犬 阿
随神門(つくば市指定文化財)は県内随一の威容を誇る。
1633(寛永10)年に徳川家光が寄進した随神門は1754(宝暦4)年に焼失、再建されたものの1767(明和4)年に再び焼失した。
現在の門は1811(文化8)年の再建。
神仏習合時代には「仁王門」であり、当時安置されていた仁王像は護持院大御堂の解体に際し、護持院住職を兼務していた東福寺(現・つくば市松塚665)住職・慧海僧正が同寺に移している。
輸送の際、沼田から桜川を筏で流したことから「流れ仁王」との呼び名がある。
現在は向かって左側に倭健命、右側に豊木入日子命の神像が安置されている。
筑波山神社 大杉筑波山神社 手水舎
筑波山神社 拝殿前狛犬 吽筑波山神社 拝殿前狛犬 阿
筑波山神社 拝殿筑波山神社 拝殿後方
壮観な拝殿は1875(明治8)年に造営後、1928(昭和3)年に銅板葺入母屋造へ改修が施されている。
向拝に吊り下げられた縦1.3m・横1.08m、重さ138kgの大鈴が目を引く。

境内社

筑波山神社 厳島神社筑波山神社 厳島神社 社殿
拝殿周辺には境内社が7社鎮座する。
随神門を過ぎた左手の池には厳島神社(市杵島姫命)。
琵琶湖の竹生島神社の御分霊を勧請し、かつては辨才天社として祀られていた。
春日造の社殿は1633(寛永10)年造。
徳川家光の寄進によるもので茨城県指定文化財となっている。
筑波山神社 日枝神社・春日神社拝殿筑波山神社 日枝神社・春日神社拝殿全景
筑波山神社 春日神社筑波山神社 日枝神社
本社拝殿の向かって右手には春日神社(武甕槌神・経津主神・天兒屋根神・比売神)と日枝神社(大山咋神)。
延暦年間(782~806年)筑波山寺開基の際、徳一が藤原氏に縁の深い両社を鎮守社として祀ったという。
両社本殿と共有する拝殿は厳島神社と同様、1633(寛永10)年に徳川家光が寄進しており、県指定文化財である。
春日神社には1908(明治41)年9月4日、境内社84社が合祀されている。
合祀された境内社一覧:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1088244/602
なお拝殿内に常陸七福神の恵比寿神も祀られている。
筑波山神社 御神水筑波山神社 朝日稲荷神社 鳥居
筑波山神社 朝日稲荷神社筑波山神社 稲荷神社
朝日稲荷神社(太田命・大宮能売命)は本社拝殿向かって左手奥へ少し上ったところに鎮座している。
嵯峨天皇第四皇子・常陸国太守忠良親王の創建とされ「出世稲荷」とも呼ばれる。
朝日稲荷のそばには別の稲荷神社が小祠にて祀られている。
なお、朝日稲荷へ向かう途中に湧水を引いた御神水の取水場がある。
筑波山神社 楠木正勝の墓筑波山神社 愛宕神社 鳥居
筑波山神社 愛宕神社筑波山神社 八幡神社
春日・日枝両社の向かって右手に細く続く参道があり、楠木正勝の墓、そして愛宕神社と八幡神社が鎮座している。

男体山・女体山

男体山・女体山の本殿ならびに山中に鎮座する四座の摂社については次ページにて紹介する。

御朱印・御朱印帳

御朱印

筑波山神社 御朱印
筑波山神社 日枝神社・春日神社 御朱印 筑波山神社 厳島神社 御朱印
筑波山神社 恵比寿神 御朱印 筑波山神社 朝日稲荷神社 御朱印

筑波山神社では通常本社のほか男女神本殿、境内末社のうち4社と常陸七福神・恵比寿神の御朱印が受けられる。
拝殿向かって左手の授与所にて初穂料各300円。
本殿の御朱印については次ページで。

御朱印帳

筑波山神社 御朱印帳三種

筑波山神社の御朱印帳は大判サイズのオリジナルが二種、通常サイズの汎用が一種類用意されている。
初穂料はオリジナルが各1,200円、汎用は800円。

筑波山神社の地図